猿回しの思い出
35年前の話。
さるが団地山公園に来るらしいよ。
小学1年生のクラスで話をしている。場所と時間を聞いてお母さんに弟(5歳)の分も含めて見学代200円を頼んだ。
当日、家に帰るとTVの上にメモとビニール袋に入った200円があった。寝たきりのじいちゃんの介護に病院に行っているとのこと。
弟と一緒に自転車で団地山公園に行く。弟の補助輪付自転車が後を付いてくる。
団地山には猿回しの猿を一目見ようと大人も子供も結構集まっていた。開園までまだ時間がある。公園の遊具で遊ぶことにした。弟が100円持ちたいとうるさいのでビニールから出して渡した。落とすんじゃないよ。白い手すりにまたがったりして遊んでいたら、ブランコのほうで遊んでいた弟が戻ってきて言った。
100円なくした。
しばらく周辺を探したが見つからない。これではどちらかが猿を見れなくなる。しょうがないので弟に見て来いと促したが、一人では嫌だという。
いろいろ考えた結果、ばあちゃんの家に行って100円をもらってくることにした。
二人で自転車に乗ってばあちゃんの住むアパートエバーグリーンまで行き、家のベルを鳴らしたが出てこない。不在のようだ。今度は病院にいってお母さんに100円もらおう。
北大病院まで結構な道のりだが、弟と二人で自転車で向かう。
急ぐあまり弟と離れてしまう。途中何度も弟はまって~としくん待って~と泣き叫んでいる。
弟の自転車の両サイドの補助輪が、方側だけ設置して浮いた側がジャージャーと音を立てて空転している。
早く。と言いながら農試公園を抜けて、大きな白い橋を渡り病院に向かう。
病室に入ると母親、ばあちゃん、さっこおばさんが寝たきりのじいちゃんの排せつ物を取り除いていた。こっちを見てびっくりしていた。事情を話し、さっこおばさんと三人で猿を見に行くことにした。途中でアイスクリームを買ってもらった。
公園につくと猿回しはすでに終わっており、片付けの最中だった。猿は車の後ろにちょこっと座ってバナナを食べて、そのままドアを閉められて行ってしまった。
とても残念だった。楽しみにしてたのに。
今、娘が5歳、息子は2歳(もうすぐ3歳)。当時の弟の代わりみたいな子供たちが近くにいる。
同じようにどこに行くにも、まって、まってとついてくる。そのたびに猿回しを思い出す。