時間からの影

これは狂気の山脈にての最後に収録されていたHPラブクラフトが癌で亡くなる前年に書いた小説である。古代の支配者はその思考を時を得てその時々の地球の支配階級の精神に潜り込ませる事ができた。現代におけるその被害者の手記がそれに当たる。数年間の昏睡の後、とはいっても古代種の別人格が活動していた時期であるが、見続けた奇妙な白昼夢についての探求と、発掘された遺跡の奥で見つけた驚愕の事実が記されている。

 

とテーマは非常に良いのだが、ラストが途中でわかってしまうし、この先何を期待して読めば良いのだろうとふと思った。これはひとえにこのような映画をたくさん見た結果によって、当時は先進的であったこのようなテーマも古臭く感じてしまうことが原因なのだろう。ラブクラフトの遺作?をあとがきで知り読み返そうとしたが、いかんせん刺激が少なくて読み進めるのが苦痛であった。当時としては画期的で魅力的なストーリーなのだろう。ただ、古代種の異形の描写は現代でも通じる気味の悪さで想像力を刺激させるのは確かだ。

 

古代の巨大植物が乱立する中、奇妙な巨大建造物が立ち並び、海に生息する無脊椎動物のような奇妙な知的生命体がひたすら知識をかき集めその長い触手で記録(何故か書き物に!)していく様は想像を掻き立てる。現実的で非現実的な何とも言えない世界の魅力が詰まっている。

 

三世宇宙ライブラリ (時間からの影) - 日常坐臥