思い出の天ぷら定食

学生時代に東北のある街で食べた天ぷら定食をふと思い出した。学生寮の知り合いに聞いてようやく探し出した裏通りにある破れた看板を掲げる天ぷら屋。やっているのかなと思いママチャリを降りて、おずおずと店を除くと婆さんと常連のようなタクシー運転手のおっさん。話に聞いてた天ぷら定食は、壁のメニュー表をみると事前情報通りに破格の350円だった。頼んで出てきた美味しい白米と味噌汁、小ぶりの海老の天ぷらを含むいくつかの天ぷら。婆さん一人が揚げていた。タクシーの運ちゃんが『ここを知っているのはかなりの通だな』と言ってきた。確か知り合いに聞いたと答えたような気がする。食べ終わり350円渡して店をでた。もう23~4年前の話だ。もう場所も忘れた。婆さんの油でキラキラ光る手に、350円を渡す瞬間をたまに思い出す。