大学に20年ぶりに尋ねてみた

引っ越しで卒業した大学に少し近くなったので高速で3時間かけて家族を連れて20年ぶりに訪ねてみた。大学時代は暗黒時代であり、楽しかった部分もあれば、気が狂いそうな孤独に負けて逃げ出してしまった過去がある。今でも卒業できずに路頭に迷う夢を見る。よくあるのは、今働いているにもかかわらず大学を卒業しなくてはならないというよく分からない夢で、大学に通いながら仕事なんてできないよと嘆き悲しみ絶望に打ちひしがれるという悪夢だ。正直今回の旅行は嫌な気持ちのフラシュバックに苦しめられるのではないかと少し心配だった。

 

家族を連れて行くあの街は、とても不思議な感覚だった。今でもそこに住んでいるような、だけどそれは二十年も前のことであるという現実の間でなんとも言えない気分になった。救いは今の自分には家族がいて、面白おかしく行動する子どもたちが今回はついてきてくれていることと、子供の頃からの知り合いの妻が一緒にいること。大学時代に感じた自分の過去との断絶感は、今は感じない。

 

昔行った床屋もまだあったし、店主は外に出て掃除をしていた。大学の前の定食屋もまだ現役でやっていた。大学はだいぶ変わっていて、古い建物は建て替えられ耐震補強もガチガチにされていた。記憶にある大学とはとても違っていて、こじんまりとした静かな構内だった(コロナウイルスで普段は立入禁止だったようだ)。途中で絶交した友達が住む学生寮は廃墟となり、新しい学生寮が建てられている。

 

ただやはりこの街は四方を高い山に囲まれて入れ言い知れぬ閉塞感を感じる。田舎から出てきてもっとすごい田舎に引っ越すのはやめたほうがよいかもしれない。食べ物は美味しいし、近くになる神社仏閣もとても素晴らしいものだった。学生時代はそんなことは知らずにブックオフと映画館を往復する日々。ああ思い出は暗く悲しい…。

 

昔住んでいたアパートを妻の”思い出せ!”の号令のもと探し出したが、アパートは跡形もなく取り壊され、表札だけが掲げられた人気のない大家さんの家と学生時代に窓を開けると唯一見えた寂しい柿の木が先端まで生い茂る雑草に囲まれて当時とは全く異なる異様な姿で立っていた。

 

大変な時期もいつかは思い出に変わる。辛いときはただ生き延びて、もがいて進めばなんとかなる。先に進もう。

 

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