Mさんの思い出

午前中に、一昨日Mさんが亡くなったと、地元の職場の先輩から連絡があった。明日、葬儀があるのだが行けないのでその旨を伝えると、連名で花輪を出してくれるという。

 

Mさんは私が会社に入った当初に親切にしてくれた人だ。就職に失敗しアルバイトで入った会社の喫煙室で、タバコを吸いながら昔のことを色々と話してくれた。おそらくアルバイトの身分でいい年した若者がかわいそうに思ったのだろう。当時はそんな優しいおじさんが現場にたくさんいた。結局そんな親切なおじさんたちに騙されて?15年もこの会社で働いてしまった。

 

Mさんの太りすぎてひょこひょこと歩く姿が面白かった。競馬を教えてくれたり(勝てなくてすぐ止めてしまったが)、私がボロいアパートに引っ越した際に、引越し祝いとして手製の料理を持ってきてくれたこともあった。結局そのアパートは結婚と同時にすぐに引っ越してしまい、お祝いしてもらったのに申し訳なかったと今にしても思う。

 

6年前に転勤で東京に出てから数年に一度会社で挨拶するぐらいだった。2年前に会社で倒れそれきり退職したと、地元に戻ったとき先輩から酒の席で聞いた。

 

Mさんは冗談で、「生きててもつまらねえ。何もいいことねえ。」と良く言っていた。「母親はボケてるし、娘の就職はうまく行かねえし、息子は飲みに行ってばっかりだ」とぼやいていた。

 

ある日、喫煙所でタバコを吸っていると、Mさんが窓枠にもたれて日を背にしながら「幸せっていうのは、普通の日常のちょっとした面白いことにあるんだよ」と言って、笑いながら老人と切符の話を始めた(内容はもう覚えてない)。周りが笑う中、「そうかもな」となんとなく思ったのを覚えている。

 

最近、Mさんみたいな人間が周りから少なくなった。学歴や役職が上がれば上がるほど気味の悪い暴力的な人間が増えていく。

 

ああ、嘆いてもしょうがない。

 

今度は俺がMさんから受けた親切を伝える番なのだろう。

 

さよならMさん。ありがとう。