転勤

 

これで入社以来4度目の転勤になる。大学を何とか卒業したあと、会社に入って移り住んだ古い社宅からみえる工場の煙突を眺めながら、俺は結局この町を出られなかったという絶望的な気分になった27歳。

 

それから15年経って、東京、千葉、愛知そして栃木県と、思ってもみなかった土地で働くことになった。

 

その間、色々とあり何度も会社を辞めようと考えたり、時々ノイローゼ気味になることもあったが、どこでも概ね良い評価を得たと思っている。

 

自分は外的なプレッシャーにはめっぽう弱い一方、行動力もあるので色々と達成してきたことがあるが、いつも心の底のどこかでこれは自分には合わない仕事だなと思いながらずっと働いてきた。

 

そんな生活をしているので本当な幸せな気分ていうのはあまり感じられることもなく、妻や子供に怒ったりする良くない父親になってしまった。(このようにいつも必要以上にシリアスに考えてしまうのが自分の悪い癖だ。)

 

人間死ぬときはいつでも死ねるのだから、もっと気楽に生きたっていいじゃないか。

 

何度も転勤していると、いずれまた転勤するんだなと言う気持ちでできるだけその土地の観光名所や特産物を食べたり、日々何とかして今この瞬間を楽しもうとするようになった。

 

仕事をしていても、時間の無駄だなと思うことはだんだん切り捨てられる様になった。

 

2019年はあまり良くない年だった。ほぼ1年間何のパフォーマンスも上げられずに、ただ仕事を辞めたいとばかり考えていた。

 

周辺にもうつ病やハラスメントで心を病むものが多く、どこか全体的にバランスを欠いているているそんな職場だった。

 

そんなこんなで昔の友人が自分が希望しているポストがあると言うので、そこに飛び込んでみたのが今回の異動だ。

 

社外に移る道もあったが、色々と考え、本を読み、人と会い、話し、自問自答した結果、違う部署へ飛び込んでみるいわゆる社内転職と言うやつを一度試してみることになった。

 

しばらくは栃木県で色々と体験してみようと思う。

 

考える時間はまだある。俺よりパフォーマンスを上げてないやつ、俺より仕事ができる奴もいる。会社は俺だけで持ってるわけじゃない。自分だけ苦しんで足を洗うのはまだ早い。道があるなら自分を知るためにも挑戦するのもいいだろう。

 

まだまだいろいろやってみる時間はある。幸いにもまだ生きる時間がある。

 

とりあえず宇都宮で餃子とビールで乾杯してから、その後の事は考えようと思う。